目指すのはビッグカンパニーより、グッドカンパニー【株式会社岩谷運送 岩谷臣吾代表取締役】後編

株式会社岩谷運送 岩谷臣吾代表取締役インタビュー後編。企業として、経営者として目指す姿や、これからのビジョンについてお話を伺いました。

インタビュー前編はこち

トータルで提供できる物流を模索中

ー10年あまりで会社の規模も大きくなり、今後目指す姿はありますか?

岩谷臣吾代表取締役(以下、岩谷):今後、コールドチェーンと呼ばれる、冷凍冷蔵倉庫を活用した食品を低温に保つ物流方式の拠点を計画しています。山口でビジネスを続けていくにも関西に拠点が必要だろうと考えているんです。

現在は工業系8割、食品流通を2割程度で事業展開していますが、これから食品流通を拡大して、拠点も更新していければと思っています。

ただし、コールドチェーンは投資にかかるコストに見合うほど、物流単価が高いのかというとそうでもありません。ですから、慎重にマーケットの調査をしながらプロジェクトを進めているところです。

当社は倉庫業もあるので利益が出ていますが、今後、運賃ももう少し上がらないことには、運送一本で事業展開している会社はどんどん厳しくなってしまいます。

しかし、運送業、倉庫業で行政区分も分かれていますから、もっとトータルで物流を提供できる方向にシフトしていくのが望ましいのだと思います。

会社を成長させて、従業員にもキャリアアップの機会を増やしたい

ーVRを活用した研修を行うなど、教育や育成にも注力していますね。

岩谷:ここは道半ばではありますが、運転手もキャリアアップできるものがなければ、意欲のある従業員のモチベーションが低下してしまうと思うんです。

ただし、会社が大きくならなければ、新しいポジションも生まれないですし、ドライバーや倉庫作業員がマネジメント側に立って、自分の成長を感じられる階段のようなものがなければ、とも思っています。ここに関しては色々試していきたいですね。

ー成長を実感する重要性は、やはりご自身の営業職のキャリアも影響しているのでしょうか。

岩谷:恐らくそうだと思います。何らかの決められた水準を与えられて、やり切ったことで高揚感が得られるものですし、やはり目標がないことには成果や達成感も味わいづらいですからね。

営業職時代は、1か月終わったら、また仕切り直して、ゼロからスタートする、終わりのないマラソンを走っていたような感覚もありました。

一方、ドライバーの仕事は始まりと終わりが見えやすい部分もあるので、日々達成感を味わいながら、楽しく仕事をしてくれたらいいなとも思いますね。

どの業種でも、経営者が抱える悩みは同じ

ー現場からマネジメントも経験した中で、課題ややりがいも刻々と変化してきたかと思います。今の岩谷さんにとって経営者としてのやりがいはどのような部分ですか?

岩谷:私が岩谷運送に入って、ありがたいことに業績は伸び続けています。当初は売上を目標にしていましたが、今は収益、利益も当然大事ですし、会社が成長していくことはやはり楽しいですね。

時には失うものもあれば、厳しいことを言わなくてはいけない局面もありますが、会社のことを一番に考えると受け入れざるを得ないものです。

もう退職したのですが、岩谷運送に長くいてくれた営業の方と、私も全国各地を回り、経営者や、彼の旧友など、様々な年代の方とお会いして、色々な経験を聞かせてもらいました。それらを自分に照らし合わせながら学びを得てきましたね。

時代ごとに手法や手段は変わっていっても、経営理念や、やるべきことっていうのは変わっていなくてずっと同じなんですよ。それは他業種であってもそうですね。

事業をしている手段が違うだけで、基本的にはみんな同じ悩みを抱えていますし、経営者として持つべき幹は誰も同じなんです。

同業種、他業種合わせて、経営者仲間も幅広くいます。同業種だと本来は競合相手ですが自分の投資計画を話せるような相手もいるんですよ。お互い信頼し合える、前を向いている同士だと色んな話ができますし、お酒を飲んだり、ゴルフ旅行に出かけたり楽しんでいます。

「やりたいこと」と「やるべきこと」は違う

ーTruck Heroesでは、経営者の皆さんに、2024年問題への体感を伺っています。岩谷さんにとって、本件はどのように映っていますか?

岩谷:法改正により、労働時間が規制されることに対しては、「どうしてだろう?」という想いもあります。生産性を上げるためといっても、生産性を上げるのが難しい職種だってあるわけですから、労働時間を規制されたら所得が下がるのは当然です。

とはいってもコンプライアンスを守らないことには会社として存続できないですから、何が必要かというと運賃単価を上げることですよね。

なかなか昭和の時代から上がらなかった運賃が、平成を飛び越えて、今は交渉がしやすくなってきたので、いい方向には進んでいると思います。

実際に、小さな企業が多い業界ですから、存続が難しくなってきた話も時折耳にしますし、舵取りをする私の役割は大きいと感じていますが、やるべきことをやっていけば勝算も十分にあるだろうなと思っています。

ある先輩に「やりたいこと」と「やるべきこと」は違うぞとハッキリ言われたことを思い出しますね。

ー全ての経営者に刺さる言葉ですね。

岩谷:やりたくなくてもやるべきことは確実にありますよね。自分たちが向かっていきたい方向もあるし、ちょっと反れているけれど、ここだけは押さえておかなければという部分もあります。

私は運賃のディスカウントをしたところで存続はできないと考えています。私たちの物流の品質は、運転手なり倉庫のスタッフの力量にかかっていますから、教育をしっかり行い、物流の品質を上げて、高単価で販売する、そのサイクルに尽きると考えています。

ビッグカンパニーより、グッドカンパニーでありたい

ー岩谷運送の強みや、これから運送業界で働こうと考えている方へのメッセージをお願いします。

岩谷:私たちは基本的にはビッグカンパニーは目指していません。ですが、地域ナンバーワンのグッドカンパニーにしていきたいと考えています。何がグッドかは、もちろん人それぞれですが、みんなにとってのグッドな会社にしたいです。

もちろん、会社員ですからルールや決まりはあります。だけど仕事するからには笑顔でいたいですし、前職が何であっても実直で素直であれば、学ぶ力もつきます。みんながワイワイと楽しく仕事できる会社にしていきたいですね。