運送・物流業界の目下の課題は人材不足。株式会社光運送は若手社員の採用・育成を積極的に進めています。内藤 祐也常務取締役に、経営者として重視しているポイントや、今後の展望について伺いました。
ー光運送さんはどのような事業をされている会社ですか?
内藤 祐也さん(以下、内藤):1957年に光小型運送という個人事業主で創業し、2005年に株式会社光運送として設立しました。その当時から保冷車を次々に導入して、現在は医薬品の配送をメインで行っています。
製造から輸送、販売まで、医薬品の適正流通の基準を意味するGDPという国際ベースのガイドラインに準拠して、配送を行うことで品質を担保していることが当社の強みです。
ー内藤さんは、これまでどのように業務に従事してきたのでしょうか?
内藤:現在、社長を務めているのが私の父親です。私は大学卒業後に地元・山口に戻ってきました。大学4年の時点でもう大型車とけん引の免許を取得していたので、在学中から帰ってきてトラックには乗っていました。入社後3年ドライバー業務に携わり、その後また3年運行管理者を務め、その後現職に就いています。
ドライバー業務の経験がなくてもマネジメントは可能だとは思いますが、私の場合は、断然経験があってよかったなと思います。些細な声がけ一つとっても、現場の立場が分かるからできることはたくさんありますね。
ー業界全体の課題である人材確保にどう取り組んでいますか?
内藤:当社もドライバーの人員は足りていないので、今後徐々に確保していくしかないのですが、やはり若いドライバーをいかに育成していくかがカギだと思っています。休日が多い、年休が取りやすい、人間関係がフラット、福利厚生がしっかりしている、などが現状やっていることですが、とにかく若い従業員が働きやすい会社にしたいとは思っていますね。
そのために、ライフプランやキャリア教育のためのセミナーを定期的に開催しています。年を重ねて退職したときに、「この会社で働いていてよかったな」と思ってくれることが経営者として一番幸せなことだと思うんです、それを実感できるのは何十年越しのことですけどね。でも、少しでも豊かな老後が過ごせるとしたら、それがベストだなと思っています。
自分自身もドライバー業務はハードだなと感じることは多々ありました。それでも、運転そのものが好きだったし、車を走らせていると、「うちのトラックが一番カッコいいな」と誇りに思っていました。そういう小さな積み重ねで、従業員の満足を高めていきたいです。
ー経営者として横の繋がりなどは意識していますか?
内藤:私は商工会議所の青年部に参加しているので、そこで知り合った経営者の方たちと飲みにいったり、ゴルフ旅行に行ったりしています。実は私は社長から、マネジメントに入るよう言われたときに、「まだ経験が浅いから、もう少し現場の仕事をしたい」と最初は反対したんです。しかし、一度経営側に入ると、組織を変えていかなくてはいけない責任もありますし、誰かに任せられるわけでもなくなりました。
ですから、今は現場を並行する余裕はありませんが、その分、経営者の方々と意見や情報交換をして、「こんな考え方があるのか」と日々刺激を受けています。
ー今後、どのような企業に成長させたいですか?
内藤:厚生労働省の山口労働局が、労働環境の改善などに取り組む企業を1社選ぶ、ベストプラクティス賞に今年は当社が選ばれることになりました。若手の従業員が多いこと、彼らを老後まで面倒見るよという想いが伝わったのかなと思います。
ですから私もどんどん若手を育成して、60歳になったら引退しようと思います。そしてゴルフ三昧しようかなと(笑)。
もちろん当分は事業にまい進するつもりです。ただ、私はたまたま親の後を継ぐ予定ですが、必ずしも経営者の後進に血縁関係が必要だとも思わないんです。適性のある人が継いで、業界全体を若返らせるに越したことはないというのが個人的な所感です。そうすれば、自然と若い従業員も集まってくるんじゃないかと考えています。
(text by Yuka Shingai)