共進株式会社 高瀬 稔彦代表取締役インタビュー後編。従業員の成長への働きかけや、経営理念に基づく地域社会への貢献、今後目指す方向性など、高瀬さんらしい事業への向き合い方を語ってもらいました。
ー課題に向き合い、事業にまい進してきた中で、従業員の皆さんに共通でもってもらいたいスキルセットはありますか?
高瀬 稔彦代表取締役(以下 高瀬):皆さんに賢くなってほしいと思います。たとえば、安全や健康面で「こういうルールだから守ってくださいね」と世の中から求められることがたくさんあります。トラックドライバーであれば心筋梗塞や脳梗塞にならないように、生活習慣病予防を徹底しましょうとか、ありますよね。その点について専門家の協会けんぽの保健師さんに、「こういう病気につながる可能性があるから、今のうちから気を付けてね」と伝えてもらうのですが、それでも自分の欲求が買ってしまうのが常です。
私の役割は、安定経営をしてみんなにきちんと給料を払ってあげることですが、もう一つ「行ってきます!」と職場に出掛けた家族をきちんと家庭に帰してあげることも大切です。コンプライアンスというと杓子定規ですが、「大きな事故を起こしたら、被害者とその家族に迷惑がかかるし、自分だけでなく家族も悲しい気持ちにさせることになる」という切り口で、正しい運転行動をする=ルールを守ることにも繋がると伝えています。道路を利用していたら頭にくることもしばしばですけど、アンガーマネジメントを通じて、自分を落ち着かせるといった事を学んで、みんなに賢くなってもらって、ずっと一緒に仕事をしたいなと思います。
ドライバーには、運行管理者資格の取得を会社負担で促しています。資格者には2年に1回継続講習があるので、社会から私たちが求められていることの理解者が増えるという点で、成果があります。
意欲がある人材は、他に技能講習や特別教育にも派遣していますし、資格手当を基本給の加算要件にしたり、昇格の基準にいくつかの資格取得を含めて職員の資格取得意欲の向上に努めています。
当社は、広島カープのファンが多いので、30人くらい入るデッキスペースを貸切って、従業員も家族も観戦できるイベントも開催しました。人間ドックにしてもですが、会社が提供する福利厚生ってこういうものかと実感してもらえればと思っています。
ー積極的に働きかけて、全体の底上げを図っているのですね。
高瀬:たとえば運転中にものを食べるとかよそ見するとか、「やってはいけない」と分かっていても、大体の場合はやり過ごしてしまうと思うんです。だけど過信して横着な運転と続けていると、いつか絶対に事故に繋がります。今事故が起きていないのは、結局可能性の問題でしかないんですよね。
危険運転などにより家族を亡くされた方が、被害者も加害者も生まない社会づくりにむけて活動する「生命のメッセージ展」の活動をお手伝いしています。犯罪被害者遺族のお話は聞いた後、しばらく何も考えられなくなるくらい重い気持ちにもなります。
実際に教育を受けても、人間ですから翌日には60%くらい忘れてしまうものです。だけど、ずしっとくるものがあれば、きっと心のどこかに引っかかって、ハッと気づかせてくれることになるんではないかと思います。
この業界だけでなく、世の中が変わっていく時ですし、色んな情報がある時代だから、自分で正しい情報や物事の本質を見分けられるようにもなってほしいです。みんなが賢くなって、みんなが幸せになれる機会を作るようにしています。
ー今後、目指すビジョンや方向性のようなものはありますか?
高瀬:26歳で代表権を引き継いで、ずっと法人のお客様同士をつなぐ役割を担ってきました。将来は地域社会の課題解決が収益に繋がる事業、ひとと人をつなぐ仕事をはじめたいです。例えば制服のリユース事業とか。個人的には学生時代からフェアトレードとかの国際ボランティアを続けているのですが、身近な地域社会の人たちと関われるようなことがしたいと考えています。
当社が社是として掲げている”誠実、積極、推譲”の”推譲”というのは、二宮金次郎の教えで、自分の手元に足るものは、まずは従業員や取引先などの利害関係者で分配して、そこで残ったものは社会に還元していこうという考え方です。その一環で、岩国地区消防組合に人口蘇生訓練に使う救急救命キッドの贈呈を行いました。
たとえば県内の国広倉庫運輸さんはこども食堂に関わっていらっしゃいますが、私たちの新事業も、既存の倉庫業や貨物自動車運送事業の延長線上で、現業のアセットを生かしてやっていきたいと思います。職員と一緒にやることで地域課題の解決のみならず、自分の職業に誇りをもつことでモチベーションアップにつながっていくといいなと思います。
(text by Yuka Shingai)