物流業界の「2024年問題」にまつわる意見交換会レポート第2回では、採用活動の課題についてフォーカスしました。諸外国のドライバー事情、外国人ドライバーの採用を進める事例などに話題が発展しました。
意見交換会の参加者
- 国広 和之会長(一般社団法人 山口県トラック協会)
- 毛利光 伸二専務理事(一般社団法人 山口県トラック協会)
- 田中 幸久課長(国土交通省中国運輸局自動車交通部)
- 藤井 利佳山口運輸支局長(国土交通省中国運輸局)
<前回はこちらから。>
ードライバーの成り手をいかに解消していくかは、当座の課題ですね。運送業界に限らず、人手不足は日本全体が抱える問題ですが、諸外国ではドライバーの数は足りているのでしょうか?
<国土交通省 中国運輸局自動車交通部貨物課 田中 幸久課長>
国土交通省 中国運輸局自動車交通部貨物課 田中 幸久課長(以下、田中):
正確なデータを参照したわけではありませんが、米国や欧州でも人材不足は深刻な問題です。
ただし欧米では、ドライバーの賃金は全て歩合制であることも多く、走れば走るほど稼げるし、単価も上がっているようです。
また、積み込みの作業と運搬がはっきりと分離されていて、車両のメンテナンス、洗車なども専門のスタッフがいるため、ドライバーは運転に専念することができるよう分業がしっかりしていますね。
ー世界1位のダウンロード数を誇る、米国の「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」というPodcast番組は、長距離移動を行うトラックドライバーから絶大な支持を受けています。米国内のドライバー人口が多い指標でもあると思いました。
田中:米国では、外国人ドライバーを積極的に採用しているからというのもあると思います。米国⇔カナダ間を走る日本人トラックドライバーのYouTubeチャンネルも話題になっていますね。
ただし、北米で仕事をしようと思うと、英語が喋れることがまず第1条件になるのは確実ですね。
ー日本では、ドライバーとして外国人を採用する動きはあるのでしょうか?
国広:頼もしい存在にはなってくれると思っています。現状としてはまだまだハードルが高く、私が代表を務める国広倉庫運輸では、まだ前例はなく、現在は女性の運行管理者やドライバーを拡充しています。。
日本での物流は納品時に細かいサービスが必要となることがあり、付帯作業も含めて熟練が求められます。語学を含め、育成ができれば理想的ですが。
田中:ルールやマニュアル、運用などが画一的であれば外国人の方も活躍できる余地はあるとは思います。
ただ、日本では、運んできた貨物を降ろして、また貨物を積むにあたって、現地で指示を待って、積める場所に移動する、そこまでのルートを自身で調べるというのが実態です。
初めて行くかもしれない場所で、車体やコースに合わせて運転するとなると、道路事情にもある程度精通している必要がありますよね。
つまり、営業所を出発したら、すべてドライバーに委ねなくてはいけないということです。
そこまで信頼できるドライバーを育成するのは、事業者としても、コストがかかることなんです。
国としては、技能評価試験など受け入れ準備は進めていて、関係省庁連名による制度運用方針、方針の運用要領も策定しています。(公社)全日本トラック協会では、ドライバーを目指す外国人向けの学習用テキスト、外国人ドライバーを受け入れたい運送事業者向けの手引きも作成し、同協会のホームページで公表しています。
外国人ドライバーの採用に向け取り組んでいる事業者にヒアリングしたところ、ミャンマー人6名の面接を終え、母国にて教育中とのことでした。
今後、ドライバーを目指す外国人、外国人ドライバーを受け入れたい運送事業者の両方に安心して制度を活用いただけるよう、このような事例を紹介していければよいですね。
国広:トラックドライバーの仕事って、運ぶ貨物によって全く違う会社、業種に思えるくらいなんです。
ダンプカーなら重機で土砂を積むので手作業はありません。
宅急便なら1日100軒くらいのお宅にお邪魔して一つ一つの貨物をお届けします。タンクローリーはガソリンや軽油をホースで繋いで納品しますが、危険物のため運転免許だけでなく危険物取扱資格も必要になります。 国広倉庫運輸のトラックも、食品と精密機器に特化した車両を揃えているため、何でも運べるわけではないんです。
必要な運転免許や資格を持っていなくても入社後に取得サポートをしてくれる企業も多く、経験の浅い人でもどこまで教育できるかが事業者にとっては肝になると思います。
<国土交通省 中国運輸局 藤井 利佳 山口運輸支局長>
藤井:私は山口県で、バスのドライバーの人材確保に関する事業に携わっているのですが、バス、タクシー、トラックとそれぞれの人材確保について連携して情報交換を進めようとしています。
その中で聞いた話では、バス、タクシー、トラックのドライバーの募集を一緒にしようとすると、トラックに最も人が流れるそうなんです。厳しい状況かとは思いますが、何か取り組みのヒントになるような有利性がトラック業界にはあるのかもしれませんね。
(text by Yuka Shingai)