社長自ら振舞う昼食でコミュニケーションも健康もサポート【陽気産業株式会社 柴川 陽子代表取締役】

運送業に限らず、日々の業務を円滑に進めるために、社内のコミュニケーションは欠かせないもの。陽気産業株式会社は社長自らがユニークな取り組みを推進しています。柴川 陽子代表取締役にお話を伺いました。

ー陽気産業さんはどのような事業を展開されているのですか?

柴川 陽子さん(以下、柴川):ウィングトレーラーをメインに長距離の陸送輸送を行っています。運ぶ荷物については一番大きくウェイトを占めているのが建材で、一般貨物を何でも運んでいます。

段落ちと呼ばれる、ハコの部分が段になっているトレーラーが多いことが当社の特徴です。段の下にパレットを敷けばフラットにもなりますし、フォークリフトでの積みおろしもしやすい、幅広く使えるということで、少しずつ認知も上がっています。

ー柴川さんはこれまでどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

柴川:短大を卒業後、陽気産業に入社し、3、4年ほど勤め、出産で一度退職した後、10年後に復帰しました。現在会長を務めている先代の社長から、引き継いだのが39歳のときで、日々社長業はもちろんのこと、運行管理者としても執務しています。

私自身も社長業が向いているのかは確信がありませんでしたが、それぞれの専門業務で優秀な人たちに助けてもらいながら、ドライバーにも寄り添いたいなという気持ちでやってきました。

ですから、私が取ってきた仕事で、荷物を運んでくれるドライバーに感謝していますし、ドライバーからも、事務所が頑張って仕事を取ってくれたら運べる、他の人が積んだり下ろしたりを手伝ってくれているから運べるという気持ちを絶えず持つことに重点を置いてくれる、そしてそこを評価できる会社にしたいと考えてきましたね。

ー子育てをしながら社長に就任するのは、大きな決断だったのではないでしょうか。

柴川:私自身もあまり要領がいい方ではないので、一生懸命に働いている人が理不尽な思いをしない環境を作りたいという想いがありました。こういうことを会社で実現したいんだと伝えると、家族も理解してくれて、楽しく一緒に家事を手伝ってくれたり、激務の私に協力してくれましたね。

会社とドライバーの関係って難しいところもあって、いつだって平等でいられるわけではありません。私もまだ道半ばで、ドライバーから厳しい指摘を受けることもありますが、苦言を呈してくれる人は、私のことを助けてくれる人だと信じているんですよね。だから厳しい言葉には絶対真理があると思うので、真摯に向き合って、否定することなく受け入れる努力を重ねています。とても難しいことですけどね。

ー柴川さんが社員の皆さんに昼食を準備されているそうですね。

柴川:元々は私がお弁当を持参していたら、会長から「おかずを分けてくれ」と言われたんです。そうしたら私の食べるものがなくなってしまうので、多く持っていくようになったんですよ。また、食事を取っていると、ちょうどドライバーさんが帰ってくる時間で、ここでも「食べる?」と分けていると、どんどんお弁当の量が多くなっていって…。

そのうち、作り立ての方がおいしいはずと事務所の小さな台所でなんとか作るようになって、事務所を建て替えた際に、台所も広くしました。今は毎日2,30人分の食事を作っています。

午前中配車業務を終えたら、食材の買い出しに出かけて、買い物も含めて1時間ほどで料理します。早く作るのは得意ですし、皆さんに食べてもらっている感覚なので、全然負担ではないんですよ、私の気分転換にもなりますし。

私も日中、配車業務などで忙しいとなかなか時間が取れないのですが、料理しているときや、食べているときはドライバーさんと交流も取れます。ドライバー同士も食べながら会話をしていると、油断して本音が出たりするので、それも参考になりますね。

あと、ドライバーの健康状態が分かるのも食事を振舞うメリットかなと思います。対面での点呼も重要ですが、それだけでは分からないこともあるので。中には、ゆっくり食事をする時間が取れないドライバーもいるので、会長がおむすびを持たせて、休憩中に食べるように伝えています。運送業ってどうしてもストレスの多い職業になりますが、みんなで同じものを食べることがよいコミュニケーションの一助になっていたら嬉しいですね。

ー今後、ドライバーを目指す人に伝えたいメッセージはありますか?

柴川:これまでたくさんの方と面接してきましたが、こういう性格・能力の人がほしいというのはないんです。コミュニケーションが大事だとは思いますが、必ずしも社交的でなければならないわけでもないですし。

私を筆頭に、専務や常務、その他部長など何人もと話をしてもらうので、こちらの話を聞いてくれて、そしてここに入りたい、頑張ってみようと思ってくれる方なら歓迎です。一度話をしにいらしてください!

(text by Yuka Shingai)