トラックドライバーが快適に業務を進めるためには、職場でのコミュニケーションやサポートが欠かせません。マネジメント層はよりよい職場環境を築くために、日々どのような工夫をしているのでしょうか。国広倉庫運輸株式会社の国広 直之取締役に、お話を伺いました。
ー国広倉庫運輸さんは、どのような事業を展開されているのですか?
食品共同配送事業と精密機器(複合機)関連の配送事業をメインに運営しています。基本的に県内の配送業務に特化しており、西は佐賀県の鳥栖、東は広島県の西条まで集荷業務を、全て日帰りで運行しています。
日々の配送では、配車係が各ドライバーに効率的に回れるようなコースを物量に応じて組み、私は山口営業所の所長として全体のマネジメントに従事しています。
ー荷物を届ける上で、安全を担保するために、工夫していることはありますか?
国広:3年に1度、適性検査として運転の技術の確認を行っています。また、視野に問題がないかも検査で確認しています。また、実際事故が起きてしまった時には、こういうところに原因があったよねと再発防止策を徹底するようにしています。
今年、力を入れているのは「ヒヤリハット」の部分です。事故を未然に防げたけれど、直前に「こういったところでヒヤっとしたよね」という事例をドライバー全員で共有して、みんなで防いでいくアクションに繋げています。
何が危険か意識統一が図れる利点もありますし、ドライバー側から「こういうことをすれば未然に防げるんじゃないか」など提案が上がってくる雰囲気作りを今は大事にしています。
ーマネジメントをする立場として、意識していることはありますか?
国広:弊社の従業員数は現在60名と、全員の顔と名前が一致する規模感です。それぞれのチーム規模を考慮して従来の階層型組織にしていますが、上司との距離感があまりに離れてしまうと、日々、コミュニケーションが生まれづらく情報をキャッチアップしにくくなります。
その距離感を縮めるために、私はあえて「部長」などの役職名はつけておらず「なおさん」と呼ばれる関係を築いています。
その他は、点呼の際にいつもと様子が違ったら、疲れが溜まっていないか、悩みがないかなども声をかけるようにしています。
また、商品事故を発生させた場合、弁済の負担を従業員が負っていた時期もあったのですが、商品を丁寧に扱う習慣も身に着き、事故率も低いことから現在は負担なしに切り替えています。
これを機に、ネガティブな視点ではなく、「どうしたら事故を減らせるか」とポジティブな目線でも取り組みが増え、「ヒヤリハット」の事例の共有も、このようなきっかけがあったからだなと思っています。
私自身もマネジメント職に就く以前は、1tワゴンから、3tトラック、4tトラック、大型車両まで一通りの運転業務を経験しました。倉庫荷役や配送など実際に経験しているからこそ、どういった気持ちが行動に繋がるのか、出てきた対策が実際に効果的かどうかなど、具体性を持って従業員との話ができていると実感しています。
ー運転技術の大会にも出場されていると伺いました。
国広:6,7年ほど前から荷主様から、技術を向上するための何かができればという声が上がり、トラックドライバー・コンテストに参加しています。当社のドライバーが全国3位に入賞しまして、来年以降も引き続き参加・入賞ができればいいなと考えております。現場にも運転技術を落とし込んでいくきっかけになりますし、これからも続けていければ理想的ですね。
ートラック業界の社会的な意義や価値をどのように感じられていますか?
国広:物流は社会の血液だとよく言われますよね。その物流を支える重要な要素を担うのがトラックです。
体も血液が流れて各機能が働くように、物流が機能しなくなると、社会全体が乱れてくる部分もありますから、
見えないところで社会全体を支えられる魅力があると思います。
コロナ禍でエッセンシャルワーカーという言葉も根付いたかと思いますが、どんな状況でも止まらない仕事であると常に意識しています。
日々皆さんの生活の裏側ということで、見えない部分ではあるけれど、縁の下の力持ちのように仕事をしたいという方がいらっしゃったら、是非一緒に頑張りましょう!とお伝えしたいです。
(text by Yuka Shingai)