Truck Heroesで紹介している運送事業者やトラックドライバーの皆さんは、山口県を中心に、全国の様々なエリアで日々、活躍しています。宇部市で創業したキチナングループ株式会社も、目覚ましい成長を続ける企業の一つです。代表取締役を務める井本 健さんに、グループの強みや、経営者としての視点を伺いました。
ーキチナングループさんは、どのような業態から創業した会社なのでしょうか?
井本健代表取締役(以下、井本):私たちの事業は、私の祖父が創業した吉南運輸という運送会社から始まりました。キチナングループの本社を構えている山口県宇部市は、化学工業などが発達したエリアで、総合化学メーカー大手のUBE社もかつては宇部興産という商号だったんです。
祖父が自衛隊で免許を取得した関係もあって、創業時は運送事業を中心としていたのですが、そこから現在にいたるまで、倉庫業、その中の請負、機械の修繕などの電気の工事周り、フレコンと呼ばれる資材の販売など、グループ会社として幅広く事業を展開しています。
私の幼少期は、父がトラック協会にも関わっていたので、青年部のイベントやお祭りに参加することも多かったですね。また、当時は公共事業が特に盛んで、キチナングループにも土木の会社があったため、働くクルマの中でも特にダンプカーを身近に感じる機会が多かったように思います。長男なので、「いずれはここを継ぐのかな?」と漠然と感じてはいましたが、本格的に考えるようになったのは、もっと先の話です。
大学で東京に進学し、東京で一度就職して、25歳で地元・山口県に戻ってきました。その後、再度上京して、起業の経験も経て、2020年からはキチナングループの三代目の代表を務めています。
ーグループが成長していく中で、目下掲げているビジョンや目標はありますか?
井本:キチナングループは、複数の事業を幅広く、多角的に展開してきました。土木から、花の土を作ったり、ダイビングスクール、専門学校のYICグループの経営にも携わっています。その中でも物流企業として創業した歴史もあり、ロジスティクスの領域で存在感を示せる企業を目指しています。やはり化学工業製品やプラント関連企業が強い地域ですから、それらの企業を後方支援できる存在でありたいですし、人材から、資材の販売まで注力しているので、ありがたいことに売上も成長しています。
ですから、既存事業を伸ばすことにも力を入れていますし、実は山口県には後継者、次世代の担い手がいらっしゃらない企業が多数あるんです。ただ、後継者がいないというだけではなく、事業継承しようにも人材育成にリソースが回すことが難しい、小さな企業も多くあるので、私たちが営業活動や採用活動を強化して、グループに入っていただく事例も増えています。
ー展開する業態が増えて、日々、試練の連続でしょうか。
井本:そうですね。でもそれが苦しいとかではなくて、いい会社にしたいという気持ちが一番強いですね。
実はここ宇部はユニクロを手がけるファーストリテイリング社の創業の地でもあるんですね。同じくUBEもこの地で炭鉱から始まって、化学事業を進めて、グローバル企業に成長にしました。小さな町から躍進して、その成長を今もずっと続けているというよいお手本を身近で見てきたこともあって、少しでも近づきたいという気持ちが子どもの頃からずっとあるのかもしれません。
大学時代はベンチャー企業でインターンとして働いた経験もありますし、身近な人が上場していく姿も近くで見て、刺激を受けました。やっぱり成長するって楽しいことですし、人の役に立つこと、感謝されることも仕事をする幸せだと思っています。ですから仕事での成長が、自分自身の気持ちを支えてくれる術になっていますね。
ただ、ユニクロもUBEも宇部だけで、事業をあれほど大きくできたわけではないですから、私たちも、ここを拠点としながらも、大きな世界観のある企業として成長していきたいなとは考えています。
(text by Yuka Shingai)