2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されている、「物流の2024年問題」。
2024年10月某日、Truck Heroesはこの「2024年問題」にまつわる意見交換会を実施し、現状や課題の共有から今後の展望まで、情報の交換を行いました。
意見交換会の参加者
- 国広 和之会長(一般社団法人 山口県トラック協会)
- 毛利光 伸二専務理事(一般社団法人 山口県トラック協会)
- 田中 幸久課長(国土交通省中国運輸局自動車交通部貨物課)
- 藤井利佳支局長(中国運輸局山口運輸支局)
ー働き方改革関連法改正から半年が経過しました。2024年10月時点で実感している課題感や、体感からお話いただけますでしょうか。
<山口県トラック協会 国広 和之会長>
国広 和之 山口県トラック協会会長(以下、国広):我々の業界は一般の企業態に比べて、労働時間が2割長くて、賃金が2割安いと言われています。働き方改革2024年においては、このイメージの払拭だけでなく、ドライバーの地位向上につながる改善を進め次の担い手を確保すること、そして是正した結果を様々な人々に理解してもらえる業界にすることがメインとなります。
田中 幸久 中国運輸局自動車交通部貨物課長(以下、田中):統計上では、トラックドライバーの労働時間は全産業平均より400~450時間と約2割、年間賃金は全産業平均より20万~60万円、5~15%低いと言われています。高齢化や人材不足も特徴的で、運賃、価格交渉が進んでいない実態もありますね。
一方で、トラックが取り上げられる時って、高速道路で事故が発生したとか、道路上で立ち往生したとか、ネガティブなケースが少なくありません。学校現場などにも、交通安全のキャンペーンで伺うことはありますが、「危ないから気を付けようね」というメッセージが強く、トラックをカッコいいものだと捉える向きが少ないんですよね。しかし、能登の地震などでは、物資を運ぶトラックはとても頼りになる存在だと注目されました。
私も1月に半月ほど石川県に派遣され、市町村に緊急物資を届けるための拠点にいましたが、全国から多くのトラックドライバーが清々しい顔で物資を届けてくれる姿や地元のトラックドライバーが同じ拠点から被災されている市町村に危険を顧みず毎日物資を届ける姿を見て、トラックの重要性を強く感じました。
国広:コロナ禍では物流企業もエッセンシャルワーカーとしての位置付けが明確になりました。ここまで皆さんの日々の生活に密着している業態はなかなかないと思いますよ。
田中:トラックドライバーの供給のボリュームゾーンは高卒の方が多く、初任給の上がり幅で見ると、実は高卒の方が大卒より大きいという結果が出ています。需要は非常に大きいはずですが、子どもが社会に出るときに得ている情報は限られていますから、職業の選択肢としてトラックドライバーに出会えていない可能性も高いですね。
実際、ドライバーになる方は身の回りにドライバーをやっている大人がいたというケースが多いので、トラックドライバーという存在が、もう少し身近になれば、子どもの視野にも入りやすくなるのではないでしょうか。
<山口県トラック協会 毛利光 伸二専務理事>
毛利光 伸二専務理事(以下、毛利光):我々もトラック協会として、何ができるかというのは常に考えています。トラックの日などで、ドライバーのテクニックを見せられる機会が持てないか…と思うんですよね。
運転席にただ座ってもらうだけではなくて、やはりトラックは動いてなんぼなので、駐車場内でもいいから、走っている隣に親御さんとお子さんを座らせてあげたら、とてもワクワクしてもらえるんじゃないかと思っています。
(text by Yuka Shingai)